2017年度に年金、医療、介護などに充てられ…
2017年度に年金、医療、介護などに充てられた社会保障給付費は前年度比1・6%(1兆8353億円)増の120兆2443億円だったことが分かった。初の120兆円台に達し、過去最高を更新した。
筆者が大学生だった1970年代当時、社会保障というのは学生の間で話題にほとんど上らず、関心もなかったように思う。大学のゼミのテーマとして普通に取り上げられるようになったのは、90年代に入ってからだ。
そのころ高齢化を背景に社会保障の規模が大きくなる一方、経済の低成長が続いた。医療や年金についてのニュースが頻繁に流れ、この問題に対する人々の意識が高まった。
社会保障問題は、一気に国民の関心事に浮上してきたという印象だ。今思えば、その当時からしっかりと納得がいくように議論し、制度をきちんと整えていれば、課題の多くは解消できていたのではないかと思う。
ところがそうはならず、医療であれば医療、年金であれば年金、福祉であれば福祉と、各項目がバラバラに論じられ、政治家は社会保障の全体的な将来像を、ついに国民の前に提示できなかった。社会保障費は伸びる一方となった。
未来を担う若い人たちの議論の盛り上がりを期待したいが、思い起こせば、若いうちは医療だ、年金だと言っても、遠い話だと思って、なかなか難しい。所得再配分について、人生の先輩たち、功成った人たちが大いに知恵を巡らすべきだ。