最近は温暖化の影響で毎年のように深刻な…
最近は温暖化の影響で毎年のように深刻な大雨被害に見舞われるようになったが、水は本来命の源であり、清流、豊かな水資源がもたらす恩恵は多岐にわたる。長良川の鵜(う)飼いで知られる岐阜県関市が名刀の産地でもあるのは、豊かな水のおかげである。
独特のそりを持つ日本刀は、平安時代の後期に完成された。産地としては、山城、大和、備前、相州、美濃(関)が有名で「五か伝」と総称される。
関が名刀を生んだ背景には、良質の焼刃土と炉の燃料の松炭、豊富で良質な水、そして長良川の水運に恵まれたことがある。
室町時代には300人もいた関の刀匠も今では10人ほどになったが、伝統はしっかり継承されている。関市の関鍛冶伝承館では、毎月第1日曜日に鍛錬の実演を行っている。真っ赤に灼熱した鋼を大槌で打って鋼に含まれる不純物を取り去り、何度も折り返して何層もの層を作り、固く、粘りのある鋼にしていくのである。
「鉄は熱いうちに打て」「鍛錬」「焼きを入れる」など人間を鍛えることに関する言葉は、刀鍛冶に由来するものが多い。
外国人の来館者の姿も少なくない伝承館を訪ね、意外だったのは、いわゆる刀剣女子が少なかったこと。日本刀の美しさ、それにまつわるストーリーが興味の中心で、それが作られていく工程や技術にはあまり関心がないのか。鍛錬の実演を観(み)て刀匠による解説を聞けば、日本刀が持つ精神的側面にもっと触れることができるのに。