米国ニューイングランド地方の沿岸部は…
米国ニューイングランド地方の沿岸部は漁業の盛んなところ。20年ほど前だが、マサチューセッツ州アン岬に画家が好んで描くモチーフNO1という場所があるというので行ってみた。ロブスターを捕る漁師小屋だった。
入り江の岸辺にある赤茶色の壁の小屋で、脇に鉄線で作った仕掛けの箱が積み重ねられていた。行き交う小型漁船、羽を休めるカモメ、対岸に美しい家々があり、画家の意欲を誘う。
北東部沿岸の名物料理の一つがこのロブスター。だが南隣のコネティカット州とニューヨーク州に挟まれたロングアイランド湾では、水揚げが9割以上減って大打撃を与えている(小紙6月25日付)。
数百人いたロブスター漁師の多くはカキ養殖や建設業に転職、今もロブスター漁を続けているのは十数人だという。一方、カナダ大西洋岸での水揚げ量は2017年に9万7000㌧。
1996年には4万㌧で倍以上に増えた。海の温暖化の影響によるものだ。ロブスターは水温が20度を超えると生息に影響が出るとされ、漁場は北に移っていった。
沿岸部を北上する暖流と北極海からの寒流が出合うのは、ロングアイランド湾北側のコッド岬。かつては動植物相の分岐点と言われたが、レイチェル・カーソンの『海辺』(平凡社)によると、変化は30年代に表れ、メーン州でニシンが減り、岬の北側までワタリガニがやって来た。55年に出された著書だが、海洋の環境変化はいまだ先が見えない。