5月になって、さまざまな花を見掛けるよう…


 5月になって、さまざまな花を見掛けるようになった。特に、垣根などに咲いているツツジは、その色彩が周囲から浮き上がっているように見えるほど。

 それほど5月は、空が澄み、花が美しい時期だと言っていい。ところが、花を見ても名前が分からないことが多い。気になるが、野外なので調べられない。

 俳句では、この5月は花にちなむ季語が多い。ただ残念なのは、その花の名前のほとんどがなじみのないものであること。例えば「羊蹄(ぎしぎし)の花」。読み方も分からない上に、花の姿さえ思い浮かばない。漢字から羊のひづめに似たものだろうと推測するだけ。

 稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』では「路傍の湿地や水辺などに多い。茎は六〇センチから一メートルにもなり、初夏、上の方の花軸の節ごとに十余りずつ輪になって小さな淡緑白色の花をつける。葉は長さ三〇センチ余り、柄があり、長大で牛の舌に似ているので『牛舌(ぎゅうぜつ)』ともいった」。

 ここまでは、まだ「羊蹄」が出てこない。次の文にようやく「根は太く黄色で薬用になる。羊蹄はこの根の形から名付けられ」とある。そして、なぜ「ぎしぎし」と読むのかというと、実のなった枝を振ると、そういう音がするからだという。

 難読の花の季語は続き、「擬宝珠(ぎぼうし)」「車前草(オオバコ)の花」「姫女苑(ひめじょおん)」「雛罌粟(ひなげし)」など一部だけを挙げてもお手上げ状態。改めて、これらの花の名前を付けた古人の自然に対する思いが並々ならぬものであることが感じられる。