厚生労働省は、白血病などの新しい免疫療法…


 厚生労働省は、白血病などの新しい免疫療法製品「キムリア」に公的な医療保険を適用することを決めた。キムリアは1回の投与で治癒が期待できる革新的な薬だが、公定価格(薬価)は3349万円で過去最高額だ。

 「助かる命が、所得の多寡で切り捨てられるのは、医師としてしのびない。やはり歓迎すべき」と都内のある外科医。ただし「医療技術は日進月歩で、医療の高額化はますます続く。公的医療のあり方についての議論を」と釘(くぎ)を刺す。正論だ。

 科学の進歩で新たな薬剤が次々と開発されている。ところががん治療薬は安価になるのではなく、先の医師が指摘するように高額化が進んでいる。世界的な競争で研究費は莫大となり、薬価はさらに上がっていく傾向だ。

 本庶佑・京都大特別教授のノーベル賞受賞で知られるようになったがん治療薬「オプジーボ」は一昨年まで1人当たり年間約3500万円かかった。特に、免疫機構を治療に応用する医薬開発は激化の様相を呈している。

 政府はオプジーボについて価格の緊急引き下げを実施。2021年度以降は毎年改定するという。キムリアについても費用対効果に基づく価格調整を行っていく方針だが、どこまで可能か。

 確かに、日本の公的医療保険は米国などと比べて大変素晴らしい制度だ。しかし、わが国の医療、年金、福祉を総合した社会保障費には限りがある。社会保障の全体的な将来像が見えてこないので不安が先立つ。