地球から小惑星「りゅうぐう」までの距離は…


 地球から小惑星「りゅうぐう」までの距離は2億8000万㌔以上。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、探査機「はやぶさ2」によるりゅうぐうへの衝突実験を成功させた。

 難事業だったが、探査機本体から分離された衝突装置が金属の塊をりゅうぐうに撃ち込むのは、発想としては、大砲の弾を目標めがけて破裂させるのと同じ。複雑な現象の解析を、できるだけシンプルな実験装置で果たすという近代の科学精神が生かされた。

 科学には想像力が必要だと言われる。「この想像の長所は、それが最も短い径路をたどっているからで、ほとんど推理に近い」(日影丈吉著『現代忍者考』)。つまり「想像力+科学的な合理性」に基づく思考が推理で、物事の核心を一気に衝(つ)くことができる。

 この科学者たちの発想を実体化させるのも大仕事で、今回、衝突装置を製作したのは福島県の企業。中核部分の爆薬が詰まったステンレス容器を正確に撃ち当てることができるよう、加工精度や強度に注意を払いつつ、軽量化の実現に腐心した。

 2002年、小柴昌俊東京大特別栄誉教授は自然に発生したニュートリノの観測に成功し、ノーベル物理学賞を受賞した。その観測装置の完成に大きく貢献したのは、浜松市の光関連電子機器メーカーだった。

 事業体と数々の素材、部品メーカーとの連携の良さこそ、科学技術立国を支えている。一連のはやぶさ2事業の成功は、そのことを改めて教えてくれた。