わくわくする期待感とともに、固唾をのんで…
わくわくする期待感とともに、固唾をのんで次の御代の元号の発表を待った人も多かったであろう。新たな元号「令和(れいわ)」は645年の「大化」以降、248番目となる。出典は「万葉集」で、日本の元号の典拠が日本の古典(国書)となるのは初めて。この意外性が新鮮さを感じさせる。
同時に元号に初登場の「令」に、多少の違和感を持った人も少なくないのでは。辞書では①いいつけ②きまり③おさ。長官④よい。立派な⑤他人の親族への敬称――の意味があると説く。
①の意味で命令、令状、号令、②で法令、律令、③で司令官、⑤で令夫人、令息など日常生活で使ってはいても、かしこまったイメージである。だが、④「よい。立派な」という意味での言葉遣いにはなじみが薄かった。違和感はそのあたりからのものであろう。
<初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き……>。出典元の万葉集は日本に現存する最古(奈良時代)の歌集で、和歌を詠みつないできた日本人の精神文化のルーツと言えよう。
しかも万葉集が特に重視されるのは、宮廷文化の色合いが強い古今和歌集などとは違って、天皇や皇族から防人(さきもり)、農民まで、幅広い階層の人々の和歌を集めているからだ。
いわば国民的文化だと言っていい。新元号から「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」(安倍晋三首相談話)。平成のように、令和が心になじむのに時間はかかるまい。