コカイン使用容疑で逮捕されたミュージシャン…


 コカイン使用容疑で逮捕されたミュージシャンで俳優のピエール瀧容疑者の出演映画が、瀧容疑者の出演シーンも含めてそのまま公開されることが、配給会社の東映によって発表された。

 「作品に罪はない」というのが公開決定の理由だ。無論、作品に罪はない。作品は作品自身をさらすだけ。公開を決定するのは人間だ。

 連続殺人で死刑になった人物が書いた小説作品も同じ。このケースでは出版自粛はなかった。「読みたい人は読めばいい」との方針だったが、その作品はさほどのものではなかったとの印象がある。現在、ほとんど忘れられている。

 今回の東映の判断は、公開予定日が4月5日に迫っていたことも関係がありそうだ。緊急避難の側面は否定できない。それでも注目されるのは、結果として「公開自粛至上主義」の風潮に対する異議申し立てとなった点だ。

 「作品を隔離してそれで終わり」という発想とは違った流れが生まれた。少なくとも「不祥事と作品の公開」というテーマについて、論点を提起したことだけは間違いない。

 特定の空間に料金を払って入場した上で接する映画作品と、環境として普通に家庭に置かれているテレビの番組とでは条件は違う。映画の方が事に対処しやすいのは当然だ。だが、この種の問題について、法律も社会的な基準も存在しない中、一つの立場が打ち出されたことは、今後の議論の行く末を考えるに当たって参考材料になったことは確かだ。