厚生労働省のエイズ動向委員会は、2018年に…
厚生労働省のエイズ動向委員会は、2018年に新たにエイズウイルス(HIV)感染が判明した人は、17年より101人減り、1288人だったとの速報値を発表した。1300人を下回るのは05年以来だが、高水準が続いている。
エイズを発症して初めて感染が分かった人は367人で28%に上る。早期に分かれば他者に感染を広げるのを防ぐだけでなく、薬で発症を抑えられる可能性もある。検査や相談をしやすい体制の整備が必要だ。
エイズをめぐっては、国内での抗レトロウイルス治療の普及は確かに見るべきものがある。しかし、4半世紀前に横浜市であった国際エイズ会議前後のエイズ防止に向けた世論の高まりが見られないのは大いに懸念される。
そのころ、国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所、東京・新宿区戸山)を何度か訪ねた。幹部の一人が「治療効果は進んでいるが、特効薬はない。感染経路は完全に解明されており、最大の予防策は性行動を正すこと」と話していたが、肝に銘じるべきだ。
また、この研究所が作成した「アジアにおけるエイズウイルスの分布と伝わった経路図」によると、多様な民族を抱えるアジアで、さまざまなタイプのエイズウイルスが見つかっている。
東欧・中央アジア地域では16年のHIV新規感染者数が10年と比べ60%も増えている。この地域の若者世代の人口が増加しており、エイズ流行に転じる可能性は小さくない。油断大敵だ。