日本の文学賞で代表的な芥川賞・直木賞は…
日本の文学賞で代表的な芥川賞・直木賞は、よく知られているように、作家の芥川龍之介と直木三十五を記念したものである。今ではテレビのニュースで報道されるほど有名になったが、賞を創設した菊池寛は将来、日本を代表する文学賞になるなどとは考えていなかったと思われる。
というのも、両者とも菊池の友人という個人的な事情から賞ができたためである。文学賞として正統的なものとしようとするならば、日本文学を代表する文豪の夏目漱石や森鴎外、尾崎紅葉らの名前を冠した賞にしなければならない。
そのあたりを考えれば、友人をしのぶという個人的な動機で、2人の名前を末永く残そうとしたということだろう。現在、芥川の名前はよく知られているが、直木はそれほどでもない。
もちろん、当時は流行作家だったので、芥川と並べてもそれほど違和感はなかったかもしれない。しかし今では、直木はその作品を見つけにくくなっている。書店などで多くの作品がすぐに手に入る芥川に比べ、直木は代表作しか手に入れることができない。
その意味では、賞としてバランスがいいとは言えないが、芥川賞とともに文学隆盛の一翼を担ったことは間違いない。「虎(トラ)は死して皮を留(とど)め人は死して名を残す」ではないが、名を残したと言っていい。その直木は昭和9(1934)年のきょう、亡くなっている。代表作『南国太平記』にちなみ、忌日は「南国忌」である。