安倍晋三首相とプーチン・ロシア大統領の…


 安倍晋三首相とプーチン・ロシア大統領の25回目となる会談が開かれたが、北方領土問題での進展は見られなかった。むしろロシア側の主張は、ますます強硬になっている。ラブロフ外相など北方領土が第2次大戦で合法的にソ連領になったと認めることを要求してきた。

 これをロシア流の駆け引きの一つと見ることもできるだろう。中国や韓国が歴史問題を対日カードに利用するのをまねたのかもしれない。それ以前にロシア人は客観的な歴史から遠いところにいるようだ。

 1945年のヤルタ会談で、米英から千島列島の領有などを条件に対日参戦を求められたソ連は、日ソ中立条約を破って火事場泥棒のように参戦した。そればかりか、日本がポツダム宣言を受諾した後の8月18日から占守島はじめ千島列島に侵攻を開始し、北方領土を占拠した。

 こういう不法占拠の歴史をロシアの国民は正確には知らないのだろう。だから日露首脳会談を前に、領土交渉に反対するデモなどが起きるのだ。これがロシアの現実である。

 民族の歴史に対する誇りは、今の日本よりはるかに強い。ソ連崩壊でプライドが傷つき、今はそれを取り戻そうとしているところだ。

 袴田茂樹新潟県立大教授は「北方領土問題でロシア人と話していて唯一意見が一致するのは、安倍政権のロシア人に対する見方が甘いということだ」と語っている。現実を直視した上でなければ領土問題の前進は難しいだろう。