海外原子力発電所事業の採算確保が安全対策…


 海外原子力発電所事業の採算確保が安全対策などのコスト増大で、難しくなってきている。日本メーカーが受注を目指したリトアニアやベトナムでは計画が凍結または撤回された。

 また三菱重工業は、事業費が当初想定(約2兆円)の2倍以上に膨らんだトルコでの原発建設計画を断念する方向で検討している。日立製作所が英国で進めている原発建設計画に関しても、経団連会長の中西宏明日立会長は「民間の投資対象として難しくなっている」と話している。

 わが国がその開発に力を注いだ「軽水炉」が、今も世界の原発の主流であり、政府は原発輸出政策について、その技術力や人材の維持という目的もあり堅持する姿勢だ。しかし原子炉の構造や運用についての安全性は、一段と高い水準が求められているのは間違いない。

 この軽水炉に対し、燃料にウランではなくトリウムを使うため、より安全な熔融塩炉がある。トリウム熔融塩国際フォーラム理事長の木下幹康氏に、東京電力福島第1原発事故後に話を聞いたが、わが国では1980年代から東大や京大でも研究されてきたという。

 実用化について、木下氏は「基本技術はあり、本気になって開発をやり始めれば、2020年代終わりごろにはできる」と話していた。

 海外原発事業の苦境は当分続くだろう。これを奇貨として、政府はトリウム熔融塩炉の開発に力を入れてはどうか。軽水炉での経験を活(い)かし一気に進展する可能性がある。