秋篠宮殿下の御誕生日に際しての御会見で…
秋篠宮殿下の御誕生日に際しての御会見で、大嘗祭が話題になった。皇室の儀式の中でも大嘗祭は、天皇にとって一世一代の極めて重要なものとされている。天皇の御即位に関わるさまざまな儀式の中で、大嘗祭は最終段階のものとも言われる。
国文学者・歌人の折口信夫は戦前、大嘗祭についての論を発表し、天皇の権威は万世一系よりも「天皇霊」に由来すると考えた。大嘗祭は天皇霊を更新する儀式だというのが折口説だ。折口は昭和天皇の御即位の経過を目にしながら大嘗祭についての考えをまとめていったとの指摘もある(安藤礼二著『折口信夫』)。
国文学者の故西郷信綱は『古事記』の神話部分を「大嘗祭の儀式を神話として表現したもの」と考えているが、興味深い。天皇以外の皇族が執り行われることのできない儀式は幾つかあるが、大嘗祭はその一つとされる。「天皇の代理」と位置付けられる摂政も例外ではない。
大嘗祭を「最高神官の即位式」とする考え方もある。「最高神官」は天皇に他ならないから、他の皇族が代行されるわけにはいかないとされてきたのだろう。
大嘗祭の制度は、天武天皇(在位673~686年)の時代に整ったと言われる。『古事記』の原型作りを推進したのも天武天皇だ。
近々大嘗祭は行われる。秋篠宮殿下は大嘗祭の規模に言及されただけで「大嘗祭自体は絶対にすべきものだ」とされている。これは、皇室の継続性を考えれば自然な御発言だ。