紅葉が盛りの京都を訪ね、東山の清水寺に…
紅葉が盛りの京都を訪ね、東山の清水寺に足を運んだ。JR京都駅から市バスに乗って五条の停留所で降り、茶わん坂を上って行くと、鮮やかに染まったモミジが一面に。荘厳な国宝・本堂との調和が美しく見事だった。
ところが、にぎわう観光客の波を離れ、本堂のある山麓から奥の山道を入って行くと、山の斜面に杉の木立が並ぶ林があり、その所々で木の幹や枝が折れ、割いたような生々しい跡が目に付く。9月初めに強い勢力で四国や近畿地方を縦断した台風21号によるものだという。
この台風で、御所でも200本以上の倒木があり、市中の並木道もしばらくの間は無残な姿をさらしていた。清水寺周辺でもそうだが、紅葉のシーズンに合わせ、市当局、寺院関係者だけでなく、地元の人々が短期間でその後始末に当たったそうだ。
今年、民間のシンクタンクが決定した「都市力」ランキングの全国1位に歴史遺産の多い京都が選ばれた。大勢の観光客への自然体のもてなしも1位の大きな要素だろうが、今回のような市を挙げての対応にも感心させられる。
万葉集に「富士の嶺の いや遠長き山路をも 妹がりとへばけによばず来ぬ」(詠み人知らず)という東歌がある。山部赤人ら旅人が富士の雄姿を愛(め)でる歌がある一方で、裾野に住む人たちが不便な山道に手を焼いていた様子もうかがえる。
万葉の昔から、名所での旅人と地元住民との意識の対比がうかがえて興味深い。