「悪い子はいねがー」「泣ぐ子はいねがー」…
「悪い子はいねがー」「泣ぐ子はいねがー」。鬼の面をかぶり、蓑(みの)をまとった村の男たちが年の終わりに家々を回る、秋田県男鹿市に伝わる民俗行事「なまはげ」。毎年大晦日にニュースでも流され、全国的に知られている。
本当に鬼が来たと思っているらしい子供たちが怖がる様は真剣だ。かわいそうな気もするが、教育効果はかなりのものがありそうである。
これと瓜二つの「あまめはぎ」と呼ばれる行事が石川県の輪島市や能登町に伝わっている。こうした来訪神に扮(ふん)して家々をめぐるという各地に伝わる民俗行事が「来訪神 仮面・仮装の神々」として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しとなった。
「来訪神」としてグループ化したことが奏功したようだ。外部からの来訪者に宿所や食事を提供して歓待する風習は、日本各地で認められる。民俗学の大家、折口信夫は、外から来訪する「客人(まれびと)」という概念を鍵に日本の神々や信仰の本質に迫った。「古事記」に登場する、大国主命の国造りを助けた少彦名命(スクナヒコナノミコト)も、天乃羅摩船(アメノカガミノフネ)に乗って波の彼方からやって来たとされる。
来訪神についてはさまざまな説があるようだが、なぜ日本に客人信仰が生まれたのか。興味深いテーマである。
人口減少で、こうした行事を継承していくのが簡単ではなくなっている所もあるという。登録が行事継承の支えとなり、さらに日本人のルーツや信仰、他界観などを考える機会となればいい。