「病気になりにくい心身をつくる」を目標と…
「病気になりにくい心身をつくる」を目標とした予防医療。その推進は「人生100年時代」を掲げて社会保障制度改革に取り組む安倍政権の重要施策の一つだ。
それに対し財務省は、予防医療への期待が膨らみ過ぎて財政健全化の機運が後退する事態を警戒し、今後編成する予算などに織り込むべきではないと主張している。後ろ向きの行政と言えまいか。
予防医療の国民啓発の先駆けの一つとなったのが「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という「8020運動」だ。1989年に当時の厚生省と日本歯科医師会の掛け声で始まった。
当初の達成率は7%程度(平均残存歯数4~5本)だったが、昨年6月に厚生労働省が結果を発表した歯科疾患実態調査(2016年)では51・2%となった。この間、口腔衛生が内臓の健康や生活習慣病予防などに少なからず影響を与えることも分かった。
ところが、運動開始からしばらくは街角の関連イベントでも人の集まりはよくなく、当時、新米記者だった気流子の取材に対し「8020って何?」と聞き返す人が多かった。今さらながら「やればできるじゃないか」と感慨深い。
全国各地の診療所や保健所の医療関係者が積極的に参加し、住民を運動に引き込んだのが功を奏した。予防医療を成功に導くには、世代を超えた運動を展開し、これが明るい未来につながる方策であることを国民に自覚させることが肝要だ。