紀伊半島に上陸して列島を縦断し、首都圏の…


 紀伊半島に上陸して列島を縦断し、首都圏のJR東日本などに交通マヒをもたらした台風24号が駆け抜けた昨日から、別名・神無月(かんなづき)の10月が始まった。神無月は全国の八百万(やおよろず)の神々が出雲大社(島根県)に集合する。

 そこで、向こう1年間の農作や漁労、男女の縁結び、酒造りなどについて「神議(かむはか)り」と呼ばれる話し合いを行う。このために各地の神社の神が留守になるから神無月で、出雲地方では神在月(かみありづき)だとする、いかにももっともらしい説があるが、これは俗説。

 神職・奈良泰秀氏によれば「元来、神無(かんな)の『な』は、『の』を意味することから“神の月”から転訛(てんか)したという説が有力です。すなわち“神を祭る月”なのです」(サンデー世界日報2009年10月4日号)。

 伊勢神宮では今月15~17日に、今年収穫した新穀を勅使を迎えてお供えする神嘗(かんなめ)祭がある。秋の実りを感謝し、皇室の弥栄(いやさか)、五穀の豊穣、国家の隆昌などを祈願する大祭(おおまつり)である。

 また、実際に菊が咲く旧暦に合わせた重陽の節句は17日。華々しい龍(じゃ)踊りや御座船(ござぶね)の曳物(ひきもの)が魅力の「長崎くんち」は、長崎・諏訪神社の御九日(おくんち)の祭りと今月は神様も何かとせわしい。

 神様は忙しいだけに、供え物も豊かな秋は人にとってはさまざまな食べ物の季節。果物もいいが、海の幸の恵みを味わいたい。今年は好調なサンマをはじめ、秋の深まりとともにイワシ、アワビ、シシャモ、カレイ、ハタハタと楽しみは尽きない。