2020年東京五輪・パラリンピックの聖火台に…
2020年東京五輪・パラリンピックの聖火台に縄文土器のデザインを採用するよう呼び掛けている団体がある。「縄文文化発信サポーターズ」で、メンバーの新潟県長岡市長らが五輪組織委員会副会長の遠藤利明元五輪担当相を訪ねて要望した。
これまで、メイン会場の設計やエンブレムの決定過程では再公募を余儀なくされるなど、すったもんだの顛末(てんまつ)だった。思い出せばうんざりだが、今回の提案はなかなかうならせる。
モデルとなるのは縄文時代中期を代表する土器の一つ「火焔型土器」。燃え上がる炎をかたどったかのような形状で、縄文土器の中でも特に豊かな装飾性が目を引く。
今月初めまで東京・上野の東京国立博物館で開かれた展覧会「縄文――1万年の美の鼓動」には多数が詰め掛け、相変わらずの縄文人気だ。1万年前という、世界的に見ても最古の時代に属する文化で、「聖火台から日本文化を発信」の意図はずいぶん気が利いている。
1950年代前半、「縄文の美」をいち早く発見した画家の故岡本太郎さん。青春時代、10年余のパリ留学で民族学、人類学などを学び、帰国後に縄文土器に出合って衝撃を受けた。
「ものすごい、こちらに迫ってくるような強烈な表情だ(中略)。こんな日本があったのか。いや、これが日本なんだ。身体中の血が熱くわき立ち、燃え上がる」(「縄文土器論――四次元との対話」)と。六十数年前の岡本さんの感動は、現代人にも広がっている。