「眼鏡かけ点が字となる秋灯火」(嶋田摩耶子)…


 「眼鏡かけ点が字となる秋灯火」(嶋田摩耶子)。テレビのCMは、商品のアピールが主要な目的。だが、それを必要とする時代の状況を示している面がある。最近、気になっているのはルーペや拡大鏡のCM。高齢者としてはふと目を止めたくなる。

 気流子もとみに最近、朝の暗がりで新聞や活字の小さい昔の文庫本を読む時、字がぼやけて判読し難いことがある。目に近づけたり、前後の文から判断したり、時には虫メガネを持ち出したりして読むことになってしまう。

 とはいえ、少しばかり見えにくいという状態で、朝夕の時間を除けば問題は全くない。それにしても、昔の人は灯火も乏しい中で、本を読み、生活を営んでいたわけだから、大変だったろうと思う。逆に言えば、現代人のように目が悪くなるという環境ではなかったのかもしれない。

 現代は情報量も膨大だし、それを処理する脳もやはり疲労が蓄積しているだろう。その上、活字やテレビ、パソコン、スマートフォンなどのニュースの洪水に翻弄(ほんろう)されているのである。目の負担はかなりのもの。

 都会に住んでいると、夜の星空さえ見上げることもほとんどない。電車の中でスマホに熱中している人たちを見ていると、目が悪くなるのも仕方がないと感じる。

 暑い夏が過ぎ去り、朝夕が肌寒い天候になっている。都会でも、自然がないわけではない。空や山などの遠景を見て疲れた目を癒やす時間をつくりたい。