2017年度版の原子力白書がまとまった。国内原発の使用…
2017年度版の原子力白書がまとまった。国内原発の使用済み核燃料から抽出したプルトニウムの管理体制について、米国が懸念していることを念頭に「国際的にも管理と削減の必要性に対する関心が高まっている」と指摘している。
11年3月の東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働が遅れており、保有量を減らすめどが立っていない。こうした中、白書は「国際社会に日本の方針について適切に説明していくことが重要だ」とも。
内閣府の原子力委員会がまとめたものだが、原子力委は国の原子力政策を推進させるための行政機関だ。米国や海外に釈明することも大切だが、福島の事故後の苦境を打開する原子力政策を聞きたい。
現状では、軽水炉による原子力発電の発電量は、資源的に見て石油を用いる火力発電と同程度しか期待できない。大半の原発が稼働していない状態が続けば、核燃料サイクルについても完結したものにはなり得ない。
こうなれば、わが国の原子力が能力を十分発揮できないまま終末に向かうことはそう遠くなかろう。白書にも、核融合開発についてのもっと突っ込んだ記述や、プルトニウムの処理が可能なトリウム熔融塩炉開発などの選択肢に関する説明が欲しい。
原子力委は戦後、わが国が原子力の平和利用に専念し、安全を優先していることを言い続け、世論形成に実績があった。政策実現のための政府と国民のパイプ役であることを忘れてはならない。