政府は西日本豪雨を激甚災害に指定する政令を…
政府は西日本豪雨を激甚災害に指定する政令を決定した。これによって、被災自治体が行う道路や河川、農地などの復旧事業への国の補助率が1~2割程度かさ上げされる。決壊した堤防などの復旧が急務だが、保安林の造成も必要だ。
わが国には保安林の一種に「魚つき保安林」がある。水の汚濁を防ぎ、養分の豊かな水を供給するなどの働きで魚介類の繁殖を助けるものだ。以前は海岸部の天然林を指したが、最近は森林の機能が重視され、河川の上流部にも植林されるようになった。同時に自然災害を防止する盾になっている。
西日本豪雨では市内を流れる黒瀬川の上流から土砂や流木が押し寄せ、大きな被害のあった広島県呉市。河口などにあるカキの養殖棚が破損した。
呉市はカキの生産量全国一を誇るが、養殖棚全体の半分程度が壊れたり流失したりしたという。日頃、魚つき保安林の形成に尽くしていれば、被害はかなり抑えられたのではないか。
2015年現在、全国にある魚つき保安林は6万185ヘクタールで、01年の2倍ほどになっている。この間、九州や東北では漁業関係者が川沿いの山林を購入し植林を進めている所もあるが、植林運動の全国的な盛り上がりは、いまひとつだ。
植林には地道な努力がいるが、森林の環境が悪化すれば海にも大きな影響が出る。それとともに、今後も豪雨災害の発生が心配されるわが国では、防災のためにも植林が重要であることを肝に銘ずべきだ。