日本の河川には二つの特徴がある。一つは…
日本の河川には二つの特徴がある。一つは勾配が急で流れが速いこと、もう一つは最大流量と最小流量の差が大きいことだ。それで洪水を起こすこともあれば、雨が降らないと水の流れが細くなり、干上がってしまうこともある。
水に恵まれていながら、昔から水不足に悩まされ、他方では水による被害を受け、生命や財産を奪われ日々の生活を破壊されたりした。「水は天からもらい水」という。天に向かっての感謝の気持ちと人知ではどうにもならない授かりものという諦めの気持ちも込められている。
治水行政では、川の上流にダムを建設し、集落が多い下流地域では堤防を設置する努力が払われてきた。戦後、ダム建設は大規模になり、堤防は土地を守る堅固な砦(とりで)と考えられ、その工事が続けられた。
これらが全国の防災レベルの底上げに大きく寄与したことは言うまでもない。しかし既に適地へのダム建設と共に堤防設置は行き渡り、増設や改善の余地は少なくなっている。
その一方で今日、地球温暖化などによる異常気象が毎年のように起こり、線状降水帯による豪雨など思いもよらぬ災禍が目立ってきた。洪水対策は新しい次元に入っていると見ざるを得ない。
戦後の治山治水では森林の整備を怠ってきた。しかし「森林は緑のダムである」と言われ、上流地域の森林による保水効果は、河川の水量の調節弁となり得る。森林の機能を生かした防災の新たな方策が急がれる。