サッカー・ワールドカップ(W杯)の決勝…
サッカー・ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント進出に当たって、西野朗監督がポーランド戦で攻撃の姿勢を見せることなく、「パス回し」による時間切れを狙う方法を取ったことは、賛否両論あるが興味深い。
日本では高校野球をモデルとしたスタイルが影響力を持っていて「全力」というキーワードが普通に実践されている。度を越えた熱投、一塁へのヘッドスライディングといった熱血プレーが称賛される。結果を度外視した美学は、日本スポーツの伝統だった。
「敬遠はフェアではない」として非難する風潮もその一つだし、丸坊主という髪型も「高校野球モデル」の象徴だ。
高校野球とサッカーは別物だが、西野監督の采配は日本特有のスポーツの伝統とは正反対のものだったと言える。監督も「不本意」「他力」という言葉でパス回しの苦渋を表現したが、それでも目的優先の方針は貫かれた。
「不本意」という個人的感情よりは「ドロ臭い手段による実績の達成」を選択した。「他力」である以上、他の試合の結果に左右される危険もあったが、イチかバチかの「賭け」によって乗り切った。
監督は「スポーツのあり方を変えよう」などと意図していたわけではないだろう。置かれた局面をどう乗り切るかという苦悩の中、達成すべき目的を愚直に直視しただけだ。直視は難しいが、そこを乗り切った結果、スポーツの光景が少しばかり変わったということなのだろう。