昨年1年間の全国の山岳遭難者数は3111人、…


 昨年1年間の全国の山岳遭難者数は3111人、死者・行方不明者は計354人に上り、いずれも過去最多を更新。遭難者の約半数は60歳以上だった。高齢者登山ブームの中、頭の痛い問題だ▼日本人の健康寿命が延び、高齢でも登山ができるようになった。しかし、多発する交通事故が問題となっている高齢ドライバーと同様、自分の体力や運動能力への過信は禁物だ。若い時に登山の経験がなく、時間に余裕のできた高齢になって始めたという人なら、なおさらである▼もう一つ最近の傾向で気になるのは、外国人の遭難が増えていること。昨年はその数121人に上り、外国人遭難者の統計を取り始めた2013年の2・8倍で、これも過去最多となった。外国人旅行者が増加し、日本の山の魅力が世界に知られるようになるのは喜ばしいのだけれど▼知り合いの外国人留学生が昨年、留学生仲間と富士山に登った時の写真を見せてもらったが、その軽装に驚いた。天候の変わりやすい日本の山の怖さを知っているとは思えない。しかも、若さに任せた、いわゆる弾丸登山に近い強行軍だった▼警察当局は民間団体と連携し、万全な装備を呼び掛ける外国語のリーフレットを外国人登山者に配布するなど、取り組みを進めている▼来月1日は富士山の山開き。いよいよ夏山シーズンが始まる。自然を甘く見ず、自分の体力・判断力を過信しないで、安全な登山を楽しんでもらいたい。