「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」。この…


 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」。この句は4年前、さいたま市の「公民館だより」でボツになった作品だ。「梅雨空」という季語があるので、俳句の形式は一応満たしているが、どう見ても「プロパガンダ(政治宣伝)」の作品だ。

 公民館が掲載を拒否したのは「世論を二分するテーマで、公民館だよりは公正中立の立場であるべきだ」ということが理由のようだ。作者はこれを不満として、さいたま市に句の掲載と200万円の損害賠償を求めて裁判を起こした。一審(さいたま地裁)では、5万円をさいたま市が支払うとの判決となった。

 5月18日の二審(東京高裁)判決では、賠償額が5000円へと減額された。一、二審とも俳句の掲載請求は認めなかった。

 高裁でさいたま市側が敗訴となったのは「思想・信条を理由に不公正な取り扱いをした」ことによるものだ。無論、思想・信条の自由は大切だが、税金で運営される市の施設の「編集の自由(編集権)」も同じように重要だ。

 そこを考えれば、5000円という極めて少ない賠償額に加えて「俳句掲載を認めない」との判決は、公民館側の対応がさほど不当ではなかったことを示す。

 俳句のテーマは限りなく広いのだから、わざわざ公的機関の刊行物にプロパガンダを掲載する必要はないのではないか。小説であれ他の芸術分野であれ、切実なテーマは政治以外にもたくさんある。政治的主張は、政治の世界に任せるのが賢明だろう。