高い医療水準と制度を誇り、平均寿命、健康寿命…


 高い医療水準と制度を誇り、平均寿命、健康寿命が世界トップクラスの日本なのに、結核の抑制では課題を残している。1年間に結核と診断された新規患者が人口10万人当たりで10人以下の国は「低蔓延(まんえん)国」とされるが、日本はこの水準に届いていない。

 平成28年の新規患者は全国で1万7625人で、人口10万人当たりで13・9人の「中蔓延国」になる(厚生労働省の集計)。患者は前年比655人減で、死者も67人減の1889人。どちらも過去最少だが、近年は年間4~6%の減少での推移である。

 このままでは、国が目標とする東京五輪の32年までの低蔓延国の仲間入りは難しそうだ。減少割合の低い理由の一つは「高蔓延国」からの患者が増加傾向にあること。

 外国生まれの患者は40カ国以上に及ぶ1338人で、前年から174人増えた。患者全体の8%だが、10年前には920人、4%だった。このうちフィリピンや中国、ベトナムなど6カ国出身者が8割を占める。

 日本語学校や技能実習先での集団感染も相次いでいる。政府は日本に留学や就労などで長期滞在予定の6カ国の外国人を手始めに、ビザ(査証)の発給要件に日本指定の現地病院が発行する結核の非罹患証明書の提出を義務付ける方針で、新たな運用は早ければ年度内に導入される見通しだ。

 外国人には大勢来てもらい日本を見てほしいが、結核の中蔓延国の汚名返上のために有効な一定の制限をかけるのはやむを得まい。