「平和」の大義を振りかざして「公平」の要で…


 「平和」の大義を振りかざして「公平」の要であるルールを曲げてまで押し進めた、こんな横紙破りを見過ごしていいのだろうか。ハルムスタード(スウェーデン)で行われた卓球の世界選手権団体戦女子で、日本の準決勝の相手は唐突に、合同チームを組んだ「コリア」に変更された。

 韓国と北朝鮮は準々決勝での対戦を試合前に取りやめ、南北合同チームを結成して戦わずして準決勝進出を決めた。この決定が、スポーツの根幹である公平性を歪(ゆが)めることは明らかだ。

 もとより、先の南北首脳会談をはじめとする南北融和の流れに乗って、北朝鮮の非核化から東アジア、世界の平和が進むのであれば望ましい。スポーツがその後押しをするのもいい。

 だが、そのためにルールを曲げるのは本末転倒だと言わざるを得まい。合同チームでやるのであれば予選リーグからそうすべきだった。ならば、ベスト8進出の国がもう一つあったのである。

 類似した問題は2月の平昌冬季五輪でもあった。アイスホッケー女子で予選に出場しなかった北朝鮮選手の参加を認め、五輪史上初の南北合同チームの結成が話題となったが、ルール順守の先頭に立つべき国際オリンピック委員会が取った例外措置には疑問符が付いた。

 特定の参加者に有利に図った今回の突然のルール変更。国際卓球連盟のバイカート会長が「ルールを超えた出来事。平和へのサインだ」と強弁したのには呆(あき)れる他ない。