「掲示場にビラ溢れをり入学す」(五十嵐哲也)…
「掲示場にビラ溢れをり入学す」(五十嵐哲也)。きょうから4月。入学式のシーズンである。特に、地方から大学に入学するために上京した新入生にとっては、未来への希望や不安に満ちた季節でもある。
気流子も東京の私大の入学式に参加するため、期待に胸を弾ませながら日本武道館に向かったことを覚えている。とはいえ、マンモス大学の入学式だったので、大勢の新入生や付き添いの家族の群れの中で右往左往していた。
広い教室で講義を受けるため、遅刻しないように電車を乗り継いで通った。ただ学生運動全盛の時代で、キャンパスがロックアウトされ、まともに通えたことは数えるほど。
その上「五月病」にかかり、外出することはあまりなく、ほぼ下宿屋で過ごしていた。友人もいなかったので、時間があれば本を読み、時々人恋しくなって親戚の家に通っていただけ。ちょっとした引きこもり状態だった。
この状態から脱することができたのは、サークル活動で知り合いができ、その会合でさまざまな世界に触れることができるようになってから。もっとも、サークルでは高校時代のような和気あいあいの雰囲気はあまりなかったので、落ち込むことも多かったのだが……。
「あふむけば口いつぱいにはる日かな」(成美)。これからは桜のほかにも多くの花々が見られるようになる。新入生諸君にとって、新芽のように希望に満ちたのびやかな日々になることを願っている。