来年5月に行われる新天皇即位の儀式について…


 来年5月に行われる新天皇即位の儀式について、共産党が文句をつけてきた。皇位継承儀式の核心となる「剣璽等承継の儀」について「天皇家の私的行為として行うべきであり、国事行為とすべきではない」とする申し入れ書を政府に提出。「憲法の国民主権と政教分離の原則を厳格に守る」ためという。

 これに対し、菅義偉官房長官は「平成の代替わりの例を踏襲することを基本として検討する」と、応じない姿勢を示した。当然である。

 「剣璽等承継の儀」は、皇位の証しとして伝わる三種の神器のうち、剣と璽を新天皇が受け継ぐ儀式。天照大神が瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天下る時に三種の神器を授けたことに由来するもので、太古からの伝統が今も生きていることを示す瞬間だ。

 皇室の神話は日本民族の記憶とでも言うべきもので、教団宗教の教義のようなものではない。それを国事行為とすることがなぜ「国民主権」や「政教分離」に反するのか理解できない。

 共産党は申し入れの中で「天皇制反対の立場ではない」と前置きをしている。しかし同党は戦後も「天皇制廃止」を掲げてきた。

 2004年に改定した党綱領では、天皇の制度について「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきもの」とした。これは一般的に「容認」への変化と捉えられたが、廃止への道を残したソフト戦術ともとれる。今回の申し入れは、廃止という本音が図らずも表れたということだろう。