北海道函館市の住民らが、電源開発(Jパワー)…
北海道函館市の住民らが、電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発の建設差し止めを求めた訴訟で、函館地裁は「重大事故が発生する具体的危険性を認めるのは困難」として原告の訴えを棄却した。妥当な判決だ。
ただこの間、原告の何人かがメディアの取材に「観光の街に原発は要らない」「放射線の影響だけでなくイメージを恐れている。危険性を持つことは、観光都市としてはあり得ない」と答えている姿が気になった。
函館市は大間町からは30㌔ほどの距離だが、津軽海峡を隔て本州と北海道に分かれ、土地柄も違う。それでも風評被害やイメージの悪さにおびえ、原発を毛嫌いしているのである。
原発だけではなく、自然災害による風評被害は必ずしも日本に限らないが、依然として根深いことを思わされる。国民一人ひとりが自覚して、何が真実かを見極め、それを払拭(ふっしょく)することが急務である。
そのために、政府が啓蒙(けいもう)し、メディアは原発の負の部分だけでなく事実を伝えることが必要だ。例えば、福島第1原発事故後に、原子力安全・保安院が廃止され、推進側と規制側を別組織にしたのは危機管理についての大きな進歩だった。
今回の地裁判決は、建設中の原発が、規制側の原子力規制委員会の新規制基準に基づく適合審査を受けている最中に下された。規制委の審査の成り行きをじっくり見てみようという司法の判断について、メディアはもっと評価すべきだ。