日展(日本美術展覧会)の「書」部門の篆刻…
日展(日本美術展覧会)の「書」部門の篆刻(てんこく)にまつわる不正問題で今月、第三者委員会による調査結果が報告された。日本画、洋画、彫刻、工芸美術の4部門には問題がなかったとされた。
篆刻を含む書部門では、会派別の入選者数の割り振り、審査や審査員選出に絡む金銭授受が確認された。
不正の背景には、書道界の強固な師弟関係がある。上位の地位に就くため、特選を受賞して審査員を務めるなどの段階を経る構造になっているという。会派別に入選者数が配分されるのでは、無所属の応募者はあらかじめ排除されることになってしまう。財力に乏しい応募者も、結果として不利な扱いを受けることになりかねない。
似たような話は、文壇における賞についても聞く。特定の作品に与えられるものではなく、過去の業績に対する賞にその傾向が強い。
「何でこの作家が?……」というケースがしばしばあるが、こういう場合、選ばれた作家と選考委員との関係によることが多い。後になって事情を知るに及んで、「なるほど……」と妙に納得させられる。
スポーツの場合、時に審判の微妙な判定はあるにしても、業績の大半は数字で示される。その点、主観が入りやすい芸術の分野では、不正の行われる可能性は高くなる。芸術の客観的評価が困難なことは事実だが、たとえそうであっても、制度によって可能な限りの対策は、今後ともなされるべきだ。