欧米でも日本でもストリート写真の黄金期と…
欧米でも日本でもストリート写真の黄金期といわれる時代があった。20世紀半ばを中心とする時期で、「路上」には異質なものとの出会いがあり、未知なるものの発見があって、エネルギーに満ちていた。
スナップショット手法で撮影された作品には鮮やかな個性が刻まれ、写真家たちにとって魅力的な空間だった。しかし今日では、「路上」はそのように魅力ある場所ではなくなってしまった。
東京都写真美術館で開催中の日本の新進作家展「路上から世界を変えていく」は、この「路上」をテーマにしている。出品作家は大森克己、林ナツミ、糸崎公朗、鍛冶谷直記、津田隆志の5氏。
それぞれまったく違った観点から路上を舞台にし、現代社会を反映させている。なぜスナップショットによるストリート写真が今日衰退したのか、それを考えさせられたのは津田氏の作品だった。
2011年11月から北海道を振り出しに、自転車で8カ月かけて全国を旅して写真を撮り続けた。津田氏は旅先で地元の人に質問する。「このあたりでテントを張れそうな場所を教えてください」。
その場所にテントを張り、一晩か二晩すごして撮影。海辺、公共施設の軒下、道の片隅などだが、そこは許されるぎりぎりの所。拒絶されるわけではないが、遠ざけられている。都市空間は巧妙に管理されていて、接触は警戒される。路上は冷え冷えとして、熱を失ったのだ。