「……と思ってございます」という言葉遣い…


 「……と思ってございます」という言葉遣いが増えているようだ。高級官僚であれ、会社の上級幹部であれ、不利な立場に置かれた時に発することが多い。

 このほかにも「……を確認してございます」「影響はないものと判断してございます」などがある。「こういう状況だから丁寧に応対しなければならない」という気持ちは理解できる。

 国語学上間違っているのかどうかは不明だが、「こんな日本語があったか?」と思うほどに奇妙な言い回しだ。言葉は変化するのだから「新しい言い回しが生まれたと考えればいい」との見方もあるだろうが、それにしても「思ってございます」はどこか卑しい。

 こんな言葉の使い方は、ここ10年ぐらいの傾向だ。2012年の段階で、これを批判した文章が手元の資料にある。「バカ丁寧に発言すれば謝罪の気持ちが伝わりやすい」という場当たり的(よく言えば緊急避難的)な用法だったものが、多くの追随者が出た結果、定着したのだろう。

 学者や専門家も偉そうなことは言えない。テレビ番組の有力司会者の発言の後、ゲストの専門家が「おっしゃる通りです」と反応する光景はすっかりおなじみだ。

 「そうです」で十分なのだから、家臣が殿様に向かって答えるような卑屈な言葉遣いは不要と思うのだが、なかなかなくならない。「下から目線」も時には必要だが、それにも限度がある。それらを支えている社会全体の暗黙の同意も、考えなくてはならない。