きょうは、暦の上では春たけなわ仲春の啓蟄…
きょうは、暦の上では春たけなわ仲春の啓蟄(けいちつ)である。難しい漢字を当てるが、冬ごもりをしていた虫などが春の陽気に誘われて、土の中から顔をのぞかせ、這(は)い出してくることをいう。
今年は月が替わった弥生・3月初日に東京などで春一番がどっと吹き、前月末まで厳しい冬の寒さが続いていたのが嘘(うそ)のように、一気に暖かな日和となった。いつもであれば、春の訪れは震えるほどの冷たい風の中にも春の兆しが感じられる早春を経るのに、それを飛び越しての仲春である。
プロ野球のオープン戦やサッカーのJリーグが始まり、森羅万象の生命が蠢(うごめ)きだす。虫は地中からひょいと首を出し、家の中で縮こまっていた人々も野外に出て柔らかな日差しを浴び、まばゆい春を謳歌(おうか)する。
しかし、陽気に浮かれてばかりはいられない。「啓蟄を啣(くは)へて雀(すずめ)飛びにけり」(川端茅舎)の句が自然界の生存競争の厳しい一面を捉えているが、人間社会も例外ではない。
人間の活動が増えるのに比例して、交通事故も増加するのは避けられない。特に雪に閉じ込められた冬が例年より長く厳しかっただけに、それがようやく終わった解放感がコワい。
全国の交通事故死者数は2月末までに、戦後最少を記録した昨年同期比で6人少ない564人となっているが、長かった厳冬で人々の活動が鈍ったことも寄与した。正念場は、町に山に野に海に人々がどっと繰り出してくる、これからである。