2018年の「新書大賞」(中央公論新社主催)…


 2018年の「新書大賞」(中央公論新社主催)には、前野ウルド浩太郎著『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)が選ばれた。これにちなんで「新書の現状」ともいうべきテーマについて、出版社の新書担当者3人による座談会が「中央公論」(3月号)に掲載されている。

 「10年前までは鉄板ネタ(売れる確率の高い題材)があった」との発言がある。織田信長、坂本龍馬をテーマにすればこれぐらい売れるという見通しが立った。

 題材だけでなく、齋藤孝、養老孟司、池上彰、佐藤優各氏といった書き手に続く者が出てこないとの意見も出た。逆に言えば、意外な題材や知名度の高くない著者のものであっても、話題になることはある。

 一例が呉座(ござ)勇一著『応仁の乱』(中公新書)だ。17年の同賞5位に入ったこの本は、応仁の乱というとかく不人気な題材を知名度が高いわけではない著者(国際日本文化研究センター助教)が書いたもの。

 養老氏や池上氏に続く者がいないならば、要は「群雄割拠」なのだから「誰かが出てくる可能性が高くなった」と捉えれば「不確実性が高いからダメ」とばかりも言えない。

 座談会では「新書の強みは、(略)書店に決まった置き場があること」という発言もあった。書店の中で単行本に比べて有利な条件が与えられている新書は、読者にとっても「探しやすい」という利点がある。出版不況の中、新書の役割や将来について考えてみることも必要だ。