火事が多発している。東京・練馬区では…


 火事が多発している。東京・練馬区では木造2階建て住宅から出火、91歳の女性が亡くなった。2階には電気ストーブがあり、出火元の可能性もある。総務省によると、2016年の火災による死者数は1452人。高齢者の犠牲が目立つ。

 死者発生率を都道府県別に見ると、65歳以上の高齢者の割合が多い自治体は高くなる傾向にある。16年は最も低い沖縄と最も高い青森の間で7倍もの差が生じている。「高齢者は若い人に比べて、火災の発生に気付きにくかったり、逃げ遅れがちだったりする」(消防研究センターの鈴木恵子主任研究官)。

 入浴時の寒暖差で血圧が急激に変動し心筋梗塞や意識障害を起こす「ヒートショック」対策で、脱衣所に置いた電気ストーブの上に干し物が落ち、火が回るケースも少なくない。建造物の構造、資材、便利になった生活空間の環境の変化が時に仇(あだ)となる。

 以前は、屋内の各部屋もふすま1枚で仕切られ、いざという時は高齢者の力でも簡単に打ち破ることもできた(雨戸や出入り口も容易に開けられた)。今は家屋空間の密閉性が高くなって、叫べど伝わらず、部屋間をたやすく移動できないことも。

 防火設備が整ったマンション火災で、炎よりも怖いのは有毒な煙。畳敷きが減り、燃えやすいじゅうたんやカーペット類が増えていることに注意が必要だ。

 便利さと安全性は必ずしも両立しない。行政当局には、高齢者目線の火災対策の義務化を求めたい。