年賀状の中に、転居通知を兼ねたものがあった…
年賀状の中に、転居通知を兼ねたものがあった。移転の時期は不明だが、その事実は明瞭に伝わる。昔、友人から通常の転居通知をもらった。「お近くにおいでの節は、是非お立ちより下さい」とあったので、千葉県の新居を訪ねた。
「お近くにおいでの節」だったので、電話連絡もしないで出向いたのだったが、相手の男性は在宅だったものの、なぜか終始不機嫌だった。当然こちらも不快になる。互いに気まずい時間を過ごしたまま退散した。以後、彼とは付き合うことがなくなってしまったので(それほど露骨に不機嫌だった)、不機嫌の理由は今も分からない。
後で別の友人にその件を伝えると、「是非お立ちより下さい」は単なるあいさつ言葉なので、それを真に受ける人間はいないとのことだった。
当時30代半ばの自分はそれほど無知だったのかとも思うが、何度も転居通知を出した経験の中で「是非お立ちより下さい」などと書いたことは一度もない。転居通知は新しい住所や電話番号を伝えればいいので、立ち寄るだの何だの余計なことは不要と考えてきた。
21世紀の今でも「お近くにおいでの節は……」などという文面は存在するのだろうか。そういえば、最近は転居通知が来ることが減ったようだ。
前期高齢者となったわが身を考えると、友人知人たちも「終(つい)の栖(すみか)」を見つけたため、転居の必要もなくなったのかなどとも考える。それはそれで一つの現実なのだろう。