「大仏は小春の空を狭めをり」(落合かつ)…
「大仏は小春の空を狭めをり」(落合かつ)。春のような暖かさを意味する小春日和という表現がある。ちょうど今頃の天候で、冬に向かう中の暖かな陽気を指す。「春」という語があっても春の季語ではない。
小春について、稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』では「陰暦十月を小春といい、ほぼ十一月にあたる。そのころは気候もおだやかなときが多く、ぽっかりとした好(よ)い日和が続く。これを小春(こはる)日和(びより)という」と解説している。
小春と呼ばれるのは、厳しい冬に入る前の暖かさがひときわ春を想起させるからだろう。歳時記を開くたびに日本語は難しいと感じる次第。こうした言葉を自在に使っていた昔の日本人の自然に対する豊かな感性がしのばれる。
人の心を動かす言葉、文章の重要性を意味する格言が「ペンは剣よりも強し」。これは人口に膾炙(かいしゃ)して有名だが、英国の政治家・小説家ブルワー=リットンの戯曲から生まれたものだ。今ではメディアの強さを示す常套(じょうとう)句のようになっている感がある。
昭和10(1935)年のきょうは、言葉で仕事をする作家や詩人、編集者などの文学者の団体である日本ペンクラブが創立された日。ペン(PEN)クラブのPは文具のペン、詩人(ポエット)や劇作家(プレイライト)、Eはエッセイストや編集者(エディター)、最後のNは小説家(ノベリスト)からきている。
ただ最近は、特定の政治的立場に立っているかのような声明が目立つのは残念だ。