2014年のきょう早朝、俳優の高倉健が亡くなった…


 2014年のきょう早朝、俳優の高倉健が亡くなった。事務所の発表によれば、死因は悪性リンパ腫。享年83だった。今年夏、森功著『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』(講談社)が刊行された。生涯で205本の映画に出演。俳優としての業績は、死の前年に文化勲章を受章したことが全てを物語る。

 興味深いのは、その個性だ。極端な秘密主義だった。このため、外国で死んだとか同性愛だったとか、事実無根の噂(うわさ)を立てられる結果となった。母親思いの一面があるのとともに、難しい男だったとも言われる。女性嫌いとされていたが、実際は逆だったとの証言もこの本には紹介されている。

 「酒は飲めない」という話も有名だった。しかし、酒癖が悪いのでやめたというのが事実のようだ。「あえて飲まない」が真相だった。

 若いころは暴力団の事務所に出入りしていたが、正式な構成員ではなかった。その後も、暴力団関係者との最小限の接点はあった。「暴力団排除」の風潮よりは、本人の個性である「義理堅さ」を優先した感がある。

 養子の事故死があって、晩年に養女をもらったが、死の際には事実が10日近くも伏せられるという珍事もあった。高倉本人は関係ないが、複雑な事情がありそうだ。

 堅苦しいばかりではなく、ちゃめっ気もあったようだ。時期は不明だが、「死はたたみ一畳で足る爽やかに」という俳句が残っている。偉大な業績と「たたみ一畳」の対比が面白い。