「企業の社会的責任(CSR)」という考え方…


 「企業の社会的責任(CSR)」という考え方がある。短期的な利益追求だけを目的とするのではなく、社会の一員として責任を果たし、企業と社会双方の発展を目指して事業を継続していくべきだとするものだ。

 今、社会は高齢化が進み、CSR事業の一つとして福祉や医療・介護の分野に進出する企業も少なくない。それぞれの得意分野で、この問題にさらにアプローチし、社会貢献してほしい。

 損害保険大手SOMPOホールディングスは保険事業のほかに介護事業も展開しているが、この間、9月に国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)と連携協定を結んだ。認知症などに関する研究を共同で進めていくという。

 自動車保険分野では、高齢の契約者らの協力を得て認知機能の低下と交通事故との関係を調査。認知症患者に対する介護技術の研究でも同センターと協力する予定だ。

 今回の事業を保険商品、サービスの強化にだけ利用するのでなく、SOMPOには認知症の早期発見や事故防止に役立てられるよう、地に足を着けた研究とその実りを期待したい。

 わが国の保険業の歴史を見ると、相互扶助の高い志を持って出発し、国民の多くの支持を得てきた。それが近年、大手保険会社の露骨な利殖の追求、違法営業や保険金不払いなど不祥事の連続で国民の信頼を大きく損なった。大手損保が社会貢献に取り組む姿勢を見せ実績を出せば、一般社会への影響も小さくない。