帝国データバンクは、人手不足に関して今年…


 帝国データバンクは、人手不足に関して今年7月に行った企業の動向調査結果を発表し、その中で「正社員が不足している」と回答した企業は45・4%となった。同社は「商品・サービスの新規開発に影響が出ている」と指摘している。

 業種別では、ソフト開発など「情報サービス」が昨年7月比9・7ポイント増の69・7%と最も高く、人材難はIT関連の業種が目立つ。企業、業界の内実を数字で読み取ることは必ずしも容易ではないが、相当深刻な事態であることは確かだ。

 特に今世紀に入って、コンピューターソフト・システム統合事業での新技術は短命だとする意識も広がっていた。そのため、関連企業は新卒者をじっくり教育するよりも、即戦力をピックアップしてきた経緯がある。

 また日本を取り巻く現在の技術環境は、半導体とコンピューター産業で進軍していた1970~80年代とかなり異なっている。日本が取り組むべき国策級の具体的な技術や、その発展方向がなかなか見えてこないのだ。

 裏を返せば、こういう分野は、手堅い経営の既存大企業が手を出しにくかったため、この間、中小・ベンチャー企業が陸続と生まれた。優秀な新卒者もこのような所に流れる傾向が目立った。

 正社員不足は、企業のこうした雇用方針の影響もある。それでも、先見の明のあった企業は人材確保の面でそれなりの結果を残している。生き残りのため、各企業に明確な経営理念が求められる。