上野の東京国立博物館で「タイ~仏の国の…


 上野の東京国立博物館で「タイ~仏の国の輝き~」が開かれている。日本とタイの間で正式な国交が結ばれたのは1887年のことで、今年は修好130周年。これを記念する特別展だ。

 タイ国内の17の国立博物館、国立図書館から厳選された116点の貴重な作品が展示されている。門外不出の名宝もあり、一巡して、タイの美術史は仏教文化によって形成されてきたことが分かる。

 仏像も日本で見るのとはどこか趣が違って興味を引かれた。歩いている姿の仏像などは、日本ではあまり見掛けないものだ。笑みもタイ固有のもの。その教えは日本よりも国民になじんでいるのかもしれない。

 出家と戒律を重んじる初期仏教の様相がよく伝えられているし、国王は僧と僧団(サンガ)の擁護者である。僧団が釈迦の教えを護持することで、国王による統治の正当性をも裏付けている。

 日タイ交流史で注目されるのは、16~17世紀の交易ぶり。日本から銀、銅、鉄などが輸出され、タイから染料の蘇木、武具の材料である鹿皮、鮫皮、鉛などが輸入された。とりわけタイで貴重視されたのは日本刀だ。

 それは王権の象徴としても用いられた。日タイ間の交流が途絶えると、日本刀を模した刀が作られる。最初は外装のみ、やがて刀身も制作されるという段階があったが、興味深いのは彼らの美意識。タイ人は外装を絢爛(けんらん)たる金板と七宝で包み威儀を正したのである。タイ独自の美術品だ。8月27日まで。