100歳を超えても現役の医師を続け、長寿日本…


 100歳を超えても現役の医師を続け、長寿日本を象徴した日野原重明さんが亡くなった。105歳、延命措置は本人が望まなかった。日野原さんが日本そして世界の人々に残したものは数多いが、何よりその生きざまが感動と勇気を与えてくれた。

 1970年の「よど号」ハイジャック事件に遭遇し人質となった時は死を覚悟した。解放され、自分の命は与えられた命、と人生観が大きく変わったという。

 95年の地下鉄サリン事件で、聖路加国際病院院長として被害者640人を受け入れたのも、命に対する強い思いと使命感からだった。

 100歳を超えてもなぜあのように溌剌(はつらつ)としているのか、その秘訣(ひけつ)をみな知りたがった。80歳を過ぎてからは、食事を1日1300㌔㌍に制限したことなどが知られている。NHKの特集番組で、週2回は血の滴るようなステーキを食べていた姿が印象に残る。単純に粗食がいいというのではなかった。

 同様に、ただ健康的な生活をすればいいというのではない。日野原さんが自身の人生観を語るのを聞きながら、長寿の背景にあるのが、精神的なもの、心の持ち方であることを教えられた。

 数々の名言も残した。「自分のためにでなく、人のために生きようとするとき、その人は、もはや孤独ではない」「未知の世界に自ら飛び込んで、やったことのないことをやることによって、使ったことのない脳が働き出す」。どの言葉にも百寿の重みがあった。