東京・上野の不忍池でハスの開花が始まって…
東京・上野の不忍池でハスの開花が始まっている。早朝の風が爽やかな時間に花が開くのである。池はおびただしい数の大きな葉で覆われて、その間に薄紅色のつぼみや花が点在している。
江戸時代中期にはここで観蓮会が開かれ、儒学者の山本北山らが詩に詠んだという。それを昭和になって引き継いだのが、この池を掘って300年前のハスの種を採取したという植物学者の大賀一郎だ。
昭和26年に、千葉市検見川の泥炭層から発掘した古代ハスの種を開花させたことで知られている。大賀によれば、不忍池でも死んだ種は腐って残らず、掘り出した種はみんな生きていた。
彼の住んでいたのは東京都府中市で、府中市郷土の森公園の修景池には自宅や寿中央公園から移された古代ハスをはじめ三十数種類ものハスがある。ハスの開花期は8月中旬までだが、古代ハスは開花期が早い。
中には孫文蓮、ネール蓮など人名の付いたのもあり、寄贈側を表している。数々の名品種は大賀に贈られたもので、大賀も「ハスは平和の象徴なり」と考えていた。晩年、中国への平和使節に古代ハスの果実100個を託して、中国科学院長郭沫若に送った。
院長は大いに喜んで、北京、天津、上海など中国各地の公園に分配し、蒔(ま)かれたという。中国ではハスはおめでたい花であり、その実を交換することは君子の交わりを約束すること。北京の北海公園のハス池でもハスは開花を迎えているだろうか。