英国映画協会発行の「サイト・アンド・…


 英国映画協会発行の「サイト・アンド・サウンド」誌上で、世界の映画監督358人が選ぶ最も優れた映画に小津安二郎監督の「東京物語」が選ばれた、というニュースが昨年8月共同電で流れた。批評家ら846人による投票でも同作品は3位だった。報道は地味だったが、考えてみれば大変なことである。

 50年前のきょう、60歳の誕生日に小津は亡くなった。生誕110年・没後50年に当たる今年は、小津とその世界を振り返る様々な催しが行われている。

 東京・神田の神保町シアターでは、11月23日から来年1月13日まで、戦前のサイレント作品を含む現存する全作品の上映を行っている。気流子も先日、昭和34年のカラー作品「お早よう」をデジタルリマスター版で観た。至福のひとときだった。

 きょうからは、東京国立近代美術館フィルムセンターで「小津安二郎の図像学」展も開かれる。絵画やデザインなどから小津芸術を読み解こうという企画だ。

 派手なアクションもなく、淡々と日本の家族を描いた小津作品が、世界で最高の評価を受けるというのは、大いに研究すべき謎だ。

 故田中眞澄氏によると小津は生前、「日本的なものが、大きなことを云えば一番世界的に通用するもんなんだ」と語っていた。この信念が「技術を完璧の域に高め、家族と時間と喪失に関する非常に普遍的な映画をつくり上げた」という世界の映画人の評価に繋がったことは間違いない。