猪瀬直樹東京都知事は作家時代、テレビの…


 猪瀬直樹東京都知事は作家時代、テレビのワイドショーなどに出演し、コメンテーターとして発言していた。10年ほど前のことだった。

 都下の衣料品店に「店の商品に手を触れないでください」という貼り紙がしてあったが、客が試着したことに店主が激怒。客に土下座をさせて追い払ったという“事件”が話題に上った。一般の衣料品店で行き過ぎだと、他のコメンテーターらは口を揃えたが、猪瀬氏は違った。

 「貼り紙に注意事項が書いてあるのだから主人の行為は当然のことで、客の方が間違っている」とコメントしたのである。こうしたストレートさが猪瀬氏の魅力で、感じ入る人も多かったのだろう。

 だが、猪瀬氏のそういう発言を支持してきた人たちは、医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取った問題での、同氏の受け答えには失望せざるを得まい。あたかも自分の知らないうちに目の前にその金が現れたというような主張を何度も繰り返している。

 自分を見失っているように見える。人間には、攻める時は強いが、守勢に回ると腰砕けになって別人のような鈍い対応になってしまう人がいる。

 残念ながら、ジャーナリストの中にもこの類の人が割とよく見られる。夜郎自大で、他人のアラを見つけ出した時は強気で攻めまくるが、自分の欠点にはなかなか気付かない。猪瀬氏の自覚はどうなのか聞きたいところだ。