シチリア島といえば、マフィアを連想する人が…


 シチリア島といえば、マフィアを連想する人が多いだろう。フランシス・フォード・コッポラ監督の映画「ゴッドファーザー」も、それにひと役買った。パレルモ空港の正式名称、ファルコーネ・ボルセリーノ空港は、マフィアとの戦いで犠牲となった2人の治安判事の名を記念したものだ。

 一方シチリアは、古代からギリシャ、ローマ、アラブ、ノルマン、スペインなど支配者が次々と交代し、さまざまな文化が融合したユニークな島である。ギリシャの神殿、アラブやノルマンの様式がミックスされた建築など豊かな文化財に恵まれている。

 東部には今も噴煙を上げるエトナ火山があり、その景観は雄大だ。気流子も20年ほど前に訪れ、この島の自然と文化に魅了された。

 いまG7サミット(主要国首脳会議)が開かれているタオルミナは、シチリアを代表するリゾート地だ。そのハイライトは海に突き出た崖の上に造られたギリシャ劇場。毎年7~8月には芸術祭が催される。

 とはいえ、リゾート地のG7首脳をうらやましいと思う人はいないだろう。北朝鮮の核・ミサイル問題、IS(イスラム国)によるテロの脅威など差し迫った難問が幾つもあって、その風光を愛(め)でる余裕はない。

 シチリアは、作家・塩野七生さんも描いた名君フリードリヒ2世ゆかりの島。地中海の透明な光と風を受けながら、難問解決の糸口をつかみ、そして何より自由・民主の価値観を共有する7カ国の団結を示してほしい。