東京都の築地市場から豊洲市場への移転問題で…
東京都の築地市場から豊洲市場への移転問題で、都の専門家会議が、追加対策を行えば有害物質を抑えることができるとの見解案を示した。対策の工事費は最大80億円。専門家から移転のお墨付きである。
今回の地下水調査で検出したベンゼンは、環境基準の最大100倍だった。それでも地下空間の底面をコンクリートや特殊なシートで覆ったり、換気装置を新たに整備したりすれば大丈夫という。
豊洲では地下水を利用するわけではない。環境基準の100倍と聞くと大変な数値のような印象を受けるが、2㍑の地下水を毎日飲み続けるという、現実にはあり得ない場合を想定してのものだ。
専門家会議の座長・平田健正放送大学和歌山学習センター所長は、環境学とりわけ環境水理学のリーダー的存在である。環境基準100倍という数値がもたらすイメージは不安を煽(あお)り立てるが、専門家の見解を信頼すべきだ。
築地には老朽化、時代遅れの設備、無数のネズミ、さらにアスベスト問題がある。早く豊洲移転を決め、追加の環境対策をするのが現実的な選択である。
ところが、18日の市場関係者との意見交換では議論が紛糾、議事を終えることができなかった。共産党が豊洲移転反対を今度の都議選の争点に据え、「都民ファースト」を掲げる小池百合子知事も「小池劇場」の出し物の一つにしているから、問題がさらにややこしくなっている。日本の台所の未来を政争の具にはしてほしくない。