「夏めくや塗替へて居る山の駅」(森夢筆)…


 「夏めくや塗替へて居る山の駅」(森夢筆)。ゴールデンウイークもきょうで終わり。明日からは仕事が待っている。せっかくの休みで羽を伸ばしたはいいが、今はその余波で疲労が残っている人も多いだろう。不思議なもので、終わってみると楽しい余韻に浸るよりも何か物足りない思いのすることの方が多い。

 5月は、ツツジやサツキが目を楽しませてくれる。どこか華やいだ気分になるのも、初夏が青春時代のように活力と希望に満ちた季節だからだろう。だが、花の蜜を求めてチョウチョやハチが飛び回る光景は、都会ではあまり見掛けない。

 とはいえ、公園の道などで足元を見れば、アリが這(は)い回って巣にエサを運んでいる様子を観察できたりする。そのけなげな姿を見ていると、イソップ寓話(ぐうわ)のアリとキリギリスの話を思い出す。

 初夏はアウトドアにふさわしい季節。山や海に行って自然に触れるのも悪くない。緑の木々や爽やかな風、そして解放感にあふれた空を大いに楽しみたい。

 文芸評論家の小林秀雄は、感動というものは文章などに表現して初めて他人と共感できるものになるということを述べている。自然に触れた感動を絵に描いたり、詩や俳句に表現したりすることで、その思い出が掛け替えのないものになるということだろう。

 特に俳句は、季語と呼ばれる言葉があるように、季節感を表現する文学なので、この時期、一度は歳時記をひもといてみたい。