寄生虫の一つで、一般の人には毛嫌いされて…
寄生虫の一つで、一般の人には毛嫌いされている線虫が、人間のがん検査で威力を発揮することが明らかになった。
線虫は体長1㍉ほどだが、犬以上の嗅覚があり、がん患者の尿に特有な物質のにおいが餌に似ているため、誘引されるという。容器に尿1滴を垂らし、約30分で線虫50~100匹の過半数が尿に寄っていけば、がんと判定される。
このがん検査法を開発した九州大助教・広津祟亮さんは「胃や大腸、膵臓など消化器がんの臨床研究では(がんを判定できる)感度が90%。早期のがんも簡便で高精度に安く検査できる」と説明。2019年末から20年初めに保険が適用されない自由診療での実用化を目指し、費用は1回数千円を想定している。
線虫の嗅覚の鋭さは何となく分かるが、こうした特徴を病気の診断に活用できるようになったことには目を見張る。線虫を使った研究の中には、ノーベル賞を授与されたものもあるという。
実は今日、寄生虫だけでなく、蛾(が)の聴覚、鳩(はと)の方向感覚、クジラの感知能力なども注目され、人々の暮らしへの応用も競われている。150度の高温や極度の乾燥状態に耐えられるなど自然環境への絶大な抵抗力を持つクマムシの能力も科学者たちの視野に入っているようだ。
こうした生物の能力の活用は人間の飽くなき探究心によるものだが、常識にとらわれていると思わず本当かと疑ってしまう。科学的アイデアが大きく広がっていることを感じる。